生酛(きもと)

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 仙台市泉区の歯医者 まつざき歯科医院の院長です。

 日本酒造りの際に良く出てくる言葉ですが、良く理解していませんでした。

お酒造りの工程は 精米、麹造り、酒母造り、発酵、上槽、火入れ、瓶詰めとありますが、生酛が関わるのは酒母造りのところ。
酒母とは 糖をアルコールに変えてくれる酵母が大量に集まったモノで 文字通り、酒の母で 「酛」と云います。
蒸し米と麹と酒母と水を混ぜて醪(もろみ)とし発酵させますが、いきなり大量に混ぜてしまうとうまく発酵がはじまらず、雑菌に侵されてしまう危険性があります。
そのため小ぶりのタンクで少しずつ発酵を促しながら、次に大きな醪タンクで大量に発酵させるためのスターターが酒母なのです。
 酒母を造るために必要な微生物のひとつに乳酸菌(不必要な菌から酵母を守る)がありますが、この乳酸菌を取り込む手法が 「生酛系酵母」と「速醸系酵母」の2種類があります。
「生酛傾向母」は 蔵内の壁や天井、床、空気中に生息する天然の乳酸菌を取り込み、乳酸菌以外にもたくさん存在する微生物の自然摂理をうまく活用しながら乳酸を繁殖させる手法で 江戸時代から行われている伝統技法です。
 生酛系酵母は 「生酛」と「山廃酛」の二つに分類されます。
「生酛」は明治時代まで行われてきた最も伝統的な手法です。
昔は精米技術が低く、米が溶けるのに時間がかかったため蒸し米と麹と水を「半切り桶」と呼ばれるタライ状の桶に入れ、櫂(かい)と呼ばれる棒ですりつぶし、糖化を早める作業を行っていました。
2~3人で押しつぶすように摺(す)ることで 米が溶けるのと同時に空気を押し出し嫌気的な状態なるため、有用な乳酸菌を取り込み不必要な菌を排除することができるようになります。
この時に歌うのが「酛すり唄」で 極寒で行う過酷な作業を自ら元気づけるためと摺りの力を合わせるために、さらには時間を計ると云う意味もあったようです。
この桶で櫂を使い摺りつぶす作業は「山卸し」とか「酛摺り」と呼ばれますが、時間がかかる上に力加減やタイミングなど高度な技術を必要とし、少し間違えば全く酒造りができないことさえありました。
 そこで重労働の「山卸し」を解消する方法として 明治に国立醸造試験所が「麹で溶かす方法」を開発しました。これが「山廃酛」です。
 「速醸酛系酵母」は近代手法を呼ばれ、人工培養された液状の醸造用乳酸を添加することで素早く酒母を酸性にし、安全に酒母造りを行う方法です。(山廃と同じ頃、国立醸造試験所にて開発)
この方法では 乳酸菌の育成期間の必要が無く、仕込み温度も20℃前後で行うことができ、蒸し米が溶けるのも糖化も早くできるので 生酛に比べれば半分の2週間ほどで酒母が完成します。
コストも抑えれれ、不必要な微生物の繁殖リスクが低く、高度な技術がなくても比較的簡単に一定品質を得ることができるのです。

そのため 安全に大量に生産できる速醸酛での製造が増え、生酛系酒母造りは急速に減少していきました。
しかし、昔から一貫して変わらず生酛を続ける蔵もわずかながら有り、今では 伝統の技に磨きをかけ、長いキャリアから導き出した経験値をプラスし、現代人好みの洗練された品格のある生酛酒を生み出しているようです。 

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